「実践アジャイル手法」 [プロジェクト管理]
「実践アジャイル手法」は各種アジャイル手法の説明(第1部)と、従来のプロジェクト管理の代表であるPMBOKとの比較を行っている本である。私としては第2部が一番知りたい情報であった。
PMBOKはソフトウェア開発だけではなく、建築や石油掘削プロジェクトなど一般的なプロジェクトでも使用することを前提としている。このため、ウォーターフォール的プロジェクト管理が前提となっているところはいなめない。このため一般的アジャイル手法の本ではPMBOKでの管理を根本的に否定しているが、この本ではなんとか対応ができるのではないかと対応策を検討しているところが違うところである。
PMBOKとアジャイル開発の管理で決定的に異なる部分は以下のとおりである。
(1)プロセス定義(スコープ管理)
PMBOKでは最初にスコープを決定することを求めているが、アジャイルでは要件の変更を受け入れることを良しとしている。このため、若干管理の手法が異なる。
(2)スケジュール策定プロセス(時間管理)
PMBOKでは事前にスケジュールを策定しそれに従って管理していくが、アジャイルでは事前におおまかなスケジュールしか決定せず、細かいスケジュールは作業直前に決まることが多い。こうした点の管理が異なる。
(3)プロジェクト計画策定プロセス(統合管理)
PMBOKではEVMで管理することをベストプラクティスとしているが、ソフトウェア開発では非線形の進捗を特性としておりEVMでの管理では不十分となる可能性がある。アジャイル手法では実績ベースで管理するようになるため、管理手法が異なることを理解する必要がある。
(4)組織計画管理プロセス(人材管理)
アジャイル手法では「人」を重要視する。開発チームは自律性を要求する。こうした点を重視しなければならない。
(5)調達管理
外注管理がまず第1に挙げられるが、アジャイル手法では従来の発注手段ではうまくいかない。要件が未決定名部分をどのように約束するか、コミュニケーションはどうするか、仕様管理をどのように行うか、PMBOK適用で一番難しい部分であると考えてもよいかもしれない。
この本ではこうした事例をさまざま挙げ、解決策を模索している。
PMBOKとアジャイル手法では考え方がかなり違うことが良く知られている。しかし何らかの方法で管理しなければならないのは事実である。PMBOKなどをベースにアジャイル手法にあったプロジェクト管理のベストプラクティスを作成していかなければならない、という状況である。まだまだ解決策が明確になっているわけではない。今後もっと検討を深める必要がありそうだ。
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