「ポストモダン・マーケティング」 [自己研鑽]
「ポストモダン・マーケティング」はコトラーなどの論理はすでに不十分であるとして、新たなマーケティング方法を提示しています。
コトラーなどが提唱したマーケティング理論は「顧客志向」のマーケティングです。このマーケティング手法はすでにかなり定着しており、どのマーケターも採用しています。その結果どうなったでしょうか?顧客はいろいろ注文を付けますが結局は買わずじまい。顧客の思うがままの商品が溢れ返ってしまいかえって購買意欲をそいでしまっている状況です。
「ポストモダン・マーケティング」はこうした状況に警鐘を鳴らし、別のアプローチを採っています。
といってもすでにみなさんご存じの手法です。
・希少性・・・例えば限定品
・威信・・・ブランド
・ミステリー性・・・秘密がある(例えばJFKの暗殺に関するものなど)
・収集癖・・・少しずつ異なるものを販売
どれも顧客志向には反するものですが、顧客の購買意欲をそそるような戦略を採っています。
顧客志向による製品の一般化からは外れるようにしています。誰もが所有するようになれば繁栄の終わりはより近くなるのです。できるだけ顧客をじらし、永く顧客に製品を追いかけさせるのです。これがポストモダン・マーケティングの根幹です。
とはいえ、顧客志向のマーケティングもアンチ顧客志向のマーケティングもすでに飽和状態となりつつあります。今後はマーケティングのマーケティング、つまり卓越した方法でマーケティングを行っていく必要があるのです。それぞれの商品・サービスの特性をマーケターがよく把握し、顧客志向なのか、それとも異なったアプローチをするのかを十分に考えて対応していく必要があるようです。
「ポストモダン・マーケティング」を読めば最新のマーケティングが得られるというものではありません。
逆にマーケティングの難しさ、奥深さがよくわかるのではないでしょうか。
「コトラー 新・マーケティング原論」
現在のニューエコノミー(デジタルエコノミー)時代に対応したマーケティングとはどうあるべきか、という教科書的な本です。
オールドエコノミーの時代の原則は「作って売る」でしたがデジタルエコノミーの時代の原則は「顧客のニーズを感じ取り、それに応える」というのがマーケティングの原則になってきています。主導権が生産者から消費者(利用者)に変わってきているということです。当然マーケティングのやり方も事業計画も変わってきます。この本はデジタルエコノミー時代のマーケティング担当者、さらには顧客と接するすべての人が読むべき教科書だと思います。
さて、この本を読んでいてふと思ったこと。一部のIT分野のリーダー企業を除いて、多くのIT企業は実はデジタルエコノミーに対応できていないのではないかと思いました。発想がオールドエコノミーから脱皮できていない。ですから、従来からある大企業が業界を引っ張るのではなく、どちらかといえば後発のソフトバンク・楽天とそういった企業が業界を引っ張る形になっているのではないでしょうか。IT業界のみなさん、もう一度自分たちのマーケティングスタイルを見直すためにも一読したほうがよろしいと思いますよ。
コトラー 新・マーケティング原論 HBSシリーズ (Harvard business school press)
作者: フィリップ・コトラー, ディパック・C・ジェイン, スヴィート・マイアシンシー出版社/メーカー: 翔泳社発売日: 2002/07/10メディア: 単行本
コメント 0