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「大いなる不安定」 [Money]

やっとこの本を読むことができました。

先のリーマンショック以降の金融危機について多くの論調は「想定外」のことが起きた、と言っていましたがそれはまったくの間違い。完全に「想定の範囲内」のもので、今までも金融危機は何度も発生していたし、必然だったとの内容のものです。

確かに「想定の範囲内」のものでしたよね。その規模は私には予測が付きませんでしたが、不動産バブルを経験している日本人にとってはサブプライムの仕組みは異常としか映らなかったはずです。それをさらに派生させた金融商品が多数出回ったのですからバブルがはじけるときにとんでもないことがおきるのはそれこそ必然。
まあ、欧米の多くの人は「土地神話」を信じてしまって、必然が見えず不動産バブルなんて「ブラックスワン」(存在しないもの)と認識してしまったのですから、何を言っても始まりませんが・・・。


ところで、今回の金融危機の1つの原因として投資銀行等の給与制度があると本書では見ています。確かに金額は大きいのですが、それ以上に大きいのが短期的な利益にしか注目しなくなるインセンティブ制度です。
本書の中の例では
  1年目:派生証券多数販売で利益拡大 -> インセンティブ大
  2年目:派生商品で損失発生、利益減少 -> インセンティブなし
  3年目:その他の商品で利益拡大 -> インセンティブ中
のようなケースを想定してみればわかるとしています。この場合、インセンティブを貰う側にとってはプラスの側面しかない。2年目で自分が販売したものが損失の原因になったとしてもマイナスにはならない。これだから1年未満の短期利益しか考えない。それが誘引して今回のCDSなどの商品が生まれる土壌ともなった。
確かにその通りです。で、本書では面白い制度を提案しています。インセンティブそのものは否定しない(場合によっては金額の大きいものでも否定しない)が、もう少しロングスパンで評価する。つまりいったんインセンティブ分をプールするんです。先ほどの3年評価を採用したとすれば
  1年目:派生証券多数販売で利益拡大 -> インセンティブ大(+10
  2年目:派生商品で損失発生、利益減少 -> インセンティブ現象(-7)
  3年目:その他の商品で利益拡大 -> インセンティブ(+5)
 この3年間の業績を評価して +10-7+5=+8のインセンティブを支払う。ちゃんと損失発生がマイナス評価されていますから短期業績ばかりに注目しているわけにはいかない。中期的判断も要求されるというわけです。こうすれば少なくとも今の(最悪に近い)インセンティブ制度よりはまともになる。
とても面白い提案です。本書で一番印象に残った内容。採用すればよいのに・・・と真剣に思いました。

本書ではそのほかにもさまざまな分析、評価、そして今後はどうなるかがさまざまな角度から考えれれています。とても参考になる内容です。この本はぜひ皆さんにも読んでほしいと本当に思います。
(どうせ、次の金融危機はいずれ・・大地震よりははるかに高い確率で起きるのですから)


大いなる不安定

大いなる不安定

  • 作者: ヌリエル・ルービニ
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2010/10/01
  • メディア: 単行本



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